3月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり

2019/6/24
【概要】
(内政)
●ビヤヌエバ首相が辞任しデル・ソラール新首相のもと内閣改造が行われた。
●ラス・バンバス鉱山を巡る社会紛争で,政府側と抗議活動を行っている住民側との間で非常事態宣言の解除と道路封鎖の解除を同時に行うことで仮合意に至った。
(外交)
●グアイド・ベネズエラ暫定大統領夫人がペルーを訪問した。
●「リマ・グループ」13か国がベネズエラにおけるロシア軍の存在を憂慮する旨の共同声明を発出した。
 
【本文】
1 内政
(1)首相の交代及び内閣改造
ア ビヤヌエバ首相の辞任
8日,ビヤヌエバ首相が辞任し,これを受け内閣が総辞職した。ビヤヌエバ内閣は2018年4月に発足し1年弱施政を行ったが,首相自身の不人気と各省庁の行政能力への不満に加え,最近の大雨による水害対応を巡って行政への批判が高まっていた。
イ デル・ソラール新首相の就任
11日,内閣総辞職を受け,サルバドール・デル・ソラール新首相が就任し新内閣が発足したところ,デル・ソラール内閣の顔ぶれは以下のとおり。19大臣中9大臣が交代となり,新内閣の9大臣が女性となった。
(ア)首相(交代)
サルバドール・デル・ソラール
元文化大臣(クチンスキー政権),俳優,ハーバード大学客員フェロー
(イ)外務大臣(留任)
ネストル・ポポリシオ
(ウ)国防大臣(留任)
ホセ・ウエルタ
(エ)経済財政大臣(留任)
カルロス・オリバ
(オ)内務大臣(留任)
カルロス・モラン
(カ)法務人権大臣(留任)
ビセンテ・セバーヨス
(キ)教育大臣(交代)
フロール・パブロ(女性)
前全国教育審議会(CNE)幹事長
(ク)保健大臣(留任)
エリサベス・トマス(女性)
(ケ)農業灌漑大臣(交代)
ファビオラ・ムニョス(女性)
前環境大臣
(コ)労働雇用促進大臣(留任)
シルビア・カセレス(女性)
(サ)生産大臣(交代)
ロシオ・バリオス(女性)
元漁業副大臣(ウマラ政権),前国家標準化機関(INACAL)総裁
(シ)通商観光大臣(留任)
エドガル・バスケス
(ス)エネルギー鉱山大臣(留任)
フランシスコ・イスモデス
(セ)運輸通信大臣(留任)
エドメル・トルヒーヨ
(ソ)住宅建設上下水道大臣(交代)
カルロス・ブルース
国会議員(「変革のためのペルー国民」所属。大臣と兼任。)
(タ)女性社会的弱者大臣(交代)
グロリア・モンテネグロ(女性)
国会議員(「ペルーの進歩のための同盟」所属。大臣と兼任。)
(チ)環境大臣(交代)
ルシア・ルイス(女性)
前環境省天然資源開発戦略担当副大臣
(ツ)文化大臣(交代)
ウヤ・オルムキスト(女性)
ラルコ博物館館長
(テ)開発社会包摂大臣(交代)
パオラ・ブスタマンテ(女性)
元開発社会包摂大臣(ウマラ政権)
(2)ラス・バンバス鉱山を巡る社会紛争
ア 21日,ラス・バンバス鉱山周辺で抗議活動を行っているフエラバンバ共同体のリーダーであるロハス氏及び同共同体の法律顧問を務めるチャベス兄弟の3名が脅迫罪の疑いで逮捕された。検察庁によれば,3名は会社・団体への脅迫により金銭を詐取する犯罪集団Los Chabelosのメンバーとされる。これに対しフエラバンバ共同体を含む鉱山周辺の38共同体が3名の逮捕への抗議及び3名の即時釈放を求めて無期限ストライキを開始した。また,住民との交渉のため現地へ向かっていたトルヒーヨ運輸通信大臣,トマス保健大臣及びブスタマンテ開発社会包摂大臣から成る政府側代表を乗せたヘリコプターが投石を受け,現地での交渉が不成立となった。
イ 31日,カトリック教会の仲介によりリマ市内で政府とフエラバンバ共同体との対話が行われた。政府側はデル・ソラール首相ほか,フエラバンバ共同体側は前日に釈放されたロハス氏ほかが出席し,交渉の条件につき協議した結果,非常事態宣言の解除と道路封鎖の解除を同時に行うことで仮合意に達した。ロハス氏は今次の仮合意事項を現地に持ち帰り抗議活動を行っている住民の判断を仰ぐと述べた。報道によれば,次回以降の対話ではデル・ソラール首相が現地入りし住民と直接交渉を行う見込み。
なお,ロハス氏と同時に逮捕されたフエラバンバ共同体法律顧問のチャベス兄弟は引き続き拘束中。
(3)ビスカラ大統領支持率(括弧内は特記ない限り前月のもの)
ア ダトゥム社:1~4日実施,全国(対象1208名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:56%(63%) 不支持:36%(32%)
イ イプソス社:13~15日実施,全国(対象1218名),誤差±2.8%,信頼度95%
支持:56%(58%) 不支持:31%(32%)
ウ IEP:23~27日実施,全国(対象1200名)誤差±2.8%,信頼度95%
支持:44%(56%) 不支持:43%(32%)
 
2 外交
(1)グアイド・ベネズエラ暫定大統領夫人の来訪
23~25日,グアイド・ベネズエラ暫定大統領夫人のファビアナ・ロサレス(Fabiana Rosales)氏がペルーを訪問した。ロサレス夫人はペルー滞在中,ポポリシオ外相及びウルス(Krishna Urs)駐ペルー米国大使と会談したほか,リマ市内でペルー在住ベネズエラ人の集会等に出席した。
ロサレス夫人は駐ペルー・コロンビア大使公邸において各紙のインタビューに答え,「ニコラス・マドゥーロの怪物的独裁によってベネズエラが陥った闇から抜け出すことは容易ではない。」としつつ,「間もなくベネズエラに自由が訪れる。家に帰れる日が近い。」とベネズエラ避難民に向けてメッセージを発出した。なおマドゥーロ体制の終焉時期の見通しに関する問いには具体的に答えなかった。
(2)ベネズエラにおけるロシア軍の存在に関する「リマ・グループ」共同声明
26日,ペルー外務省はベネズエラにおけるロシア軍の存在を憂慮し,地域の平和と安全を脅かすいかなる挑発行為又は軍の展開も非難するとともに,マドゥーロ政権を正統なベネズエラ政権であるとして同政権と関係を維持する各国に対し立場を改めベネズエラにおける民主主義と憲法秩序の回復に協力するよう呼びかける旨の「リマ・グループ」13か国共同声明を発出した。