5月のペルー内政と外交の主な動きは以下のとおり

2019/6/24

【概要】

(内政)

 ●政府が国会に提出した一連の政治改革法案のうち,国会議員の不逮捕・不起訴特権剥奪に係る法案が廃案になった。

 ●汚職疑惑がかけられているチャバリ前検事総長に対する弾劾決議案が国会で廃案になった。

 ●ビスカラ大統領が国民向けメッセ-ジで国会が無処罰を推進しているとして再度のデル・ソラール内閣信任決議請求を国会に対して行うと発表した。

 ●農業・灌漑団体によるデモ・抗議活動が行われ,政府との間で対話メカニズムを設置することが合意された

(外交)

 ●「リマ・グループ」が国際コンタクト・グループ,国連,ロシア,トルコ,キューバ等に対しベネズエラ問題の解決に協力するよう呼びかける旨の共同声明を発出した。

 ●「リマ・グループ」がサンブラノ・ベネズエラ国民議会第一副議長の拘束を不法であると非難する旨の共同声明を発出した。

 ●第19回アンデス共同体首脳会合がリマで開催された。

 ●ドゥケ・コロンビア大統領が国賓としてペルーを訪問しビスカラ大統領と首脳会談を行った。

 

【本文】

1 内政

(1)政治改革法案の審議を巡る政府と国会の対立

 ア 16日,政府による12の政治改革法案(4月11日提出)のうち,国会議員の不逮捕・不起訴特権を剥奪する権限を国会から最高裁に移す政府案が国会憲法委員会で廃案になった。

 イ 21日,ビスカラ大統領は,国会に政治改革を進める意思が欠如しているとして,同日の憲法委員会に出席予定だったデル・ソラール首相を欠席させるとともに,自ら国会に直接出向いて抗議の書簡を提出した。トルヒーヨ出張中で国会を不在にしていたサラベリー議長はビスカラ大統領の行動に強い不快感を示した。

 ウ 28日,国会弾劾小委員会は,汚職に関与した疑惑でのチャバリ前検事総長の弾劾決議(最高検事職の解任と複数の犯罪疑惑での告発)案を廃案とした。チャバリ前検事総長はケイコ・フジモリ人民勢力党党首及びガルシア元大統領と同盟するビスカラ大統領の政敵とみなされており,昨年7月の司法スキャンダル発覚以降複数の汚職疑惑がかけられていた。

 エ 29日,ビスカラ大統領は国民向けメッセージを発出し,国会が政府の政治改革法案を歪め,またチャバリ前検事総長を政治的に庇護するなど,国民に背いて無処罰を推進しているとして立法府を強く非難した。また,国会に対し政治改革法案の審議や前検事総長弾劾請求決議否決の見直しを求めるとして,内閣信任決議請求を行うと発表した。

 オ 30日,デル・ソラール首相はサラベリー国会議長宛書簡を発出し,政府の政治改革法案につきその本質的内容を変えることなく,今通常国会会期末までに同法案を可決するよう要求すべく内閣信任決議案を提出すると通知した。

(2)農業・灌漑団体によるデモ・抗議活動

 13日,全国農業会議(CONVEAGRO)及び全国灌漑利用者委員会(JNURP)を実施主体として,小規模・家族農業従事者が全国15州で24時間のストライキ・抗議活動を行った。報道によれば,主催者側発表でおよそ100万人が24時間農作業を停止し,また幹線道路の封鎖が各地で行われ通常の経済活動に支障が生じた。これを受け政府はCONVEAGRO及びJNURPとの対話メカニズムを設置すると約束した。22日,デル・ソラール首相及びムニョス農業灌漑省出席のもと,テーマ毎に5つの対話テーブルを設置することで合意した旨の議事録に両者が署名した。

(3)ビスカラ大統領支持率(括弧内は特記ない限り前月のもの)

 ア ダトゥム社:36日実施,全国(対象1214名),誤差±2.8%,信頼度95

   支持:45%(49%)  不支持:48%(44%)

 イ イプソス社:1517日実施,全国(対象1212名),誤差±2.8%,信頼度95

   支持:42%(44%)  不支持:47%(45%)

 ウ IEP:1822日実施,全国(対象1240名)誤差±2.8%,信頼度95

   支持:39%(42%)  不支持:50%(46%)

 

2 外交

(1)ベネズエラ情勢

 ア 「リマ・グループ」緊急外相会合の開催

 3日,ペルーにおいて「リマ・グループ」緊急外相会合が開催され,マドゥーロ独裁体制の違法な国権のさん奪をこれまで同様に非難し,グアイド暫定大統領による民主主義回復の取組を支持するとともに,国際コンタクト・グループ,国連,ロシア,トルコ,キューバ等に対しベネズエラ問題の解決に協力するよう呼びかける旨の14か国共同声明が発出された。またポポリシオ外相は記者会見で,ベネズエラに対する外国軍の介入に反対する「リマ・グループ」の立場に変更はないと述べた。

 イ 9日,「リマ・グループ」は,ベネズエラにおいてエドガル・サンブラノ国会第一副議長が議員特権を剥奪されて拘束されたことを不法であると非難する12か国共同声明を発出した。

(2)第19回アンデス共同体首脳会合

 ア 26日,リマにおいて第19回アンデス共同体(CAN)首脳会合が開催され,ペルー,ボリビア,コロンビア,エクアドルの大統領が出席した。ビスカラ大統領は演説で,CANの50年にわたる地域統合へ向けた努力の結果,加盟国国民のパスポート・ビザ無しでの相互往来,域内自由貿易の確立,組織犯罪対策と国境地域の統合を挙げた。また,加盟国の通行許可一元化,域内で携帯電話による国際データ・ローミングを低価格で提供するための仕組み作り,電力供給に係るCAN共同市場の創設及び生産面での地域統合,グローバル・バリューチェーンへの参入,中小企業支援等に言及した。首脳会合後,域内自由貿易の発展,ヒトの自由な移動,行政手続のデジタル化,エネルギーの相互連結性,イノベーション,情報通信技術開発の促進等を内容とする共同宣言が発出された。

 イ ペドラサ(Jorge Hernando Pedraza)CAN事務局長(コロンビア人)は,大規模なベネズエラ人の国外流出に関し,CAN加盟国に流入した同国民への支援にCANとして対処する必要があると述べた。また同事務局長は,ベネズエラとチリのCANへの復帰に期待感を示した(注:ベネズエラはチャベス前政権の2006年に,チリはピノチェト軍事政権下の1976年にそれぞれCANを脱退。)。

(3)ペルー・コロンビア首脳会合

 27日,ビスカラ大統領は国賓として来訪中のドゥケ・コロンビア大統領と首脳会談を行った。会談では汚職との闘い,両国境にまたがるアマゾンの保全,森林破壊及び違法鉱業対策,相互投資の進展,非伝統産品の貿易増,ペルー・コロンビア国境地域統合開発基金等が議題にのぼった。またベネズエラ情勢につき両首脳は,「リマ・グループ」を通じて両国政府の立場が一致していることを確認しつつ,国際社会に対し,ベネズエラ避難民の受け入れ国への協力を強化するよう呼びかけるとともに,「キト宣言」及び「ラ米地域におけるベネズエラ人の人的移動に関するアクション・プラン」の実施へ向け前進することが必要であると認識した。